情熱の住処

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「会いたい」とは言わない。

「今から行く」。


「来て欲しい」とは言わない。

「来たいなら来れば」。


「好き」だとは言わない。

「好かれてるのは知ってた」。


だから、私があなたの分まで言う。


会いたい。

行きたい。

大好き。


そうやって、夜は二人ずっと抱き合って眠る。

朝になって何度もキスをして別れる。


それが、彼の情熱。

私の情熱。

終わりの季節

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知らない服を着ていた。

そうか、季節が変わったんだ。


春に出会って、夏を過ごし、もう秋になっていた。


秋の深まる中、さすがに衣替えしたんだね。


そんなことをぼんやり思いながら、彼が話すのを見ていた。


うん。わかってたよ。

大丈夫。泣いたりも、責めたりも、取り乱したりもしない。


彼はちょっと驚いたような表情をして、でもまた、辛そうな顔に戻った。

そんな演じる必要ないのに。


さようなら。

私も本気で好きだったのだろうか?


いつもいつも会いたくて、会えると愛してるって言って来たけど、全部本当だったんだろうか?


彼が立ち去った浜辺。

冷たい風の中、海に向かって行く人をぼんやりと眺めていた。